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ついに立入検査!「危機対応融資」での商工中金の不正融資とは

ついに立入検査!「危機対応融資」での商工中金の不正融資とは

政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金)が不正な融資を行っていた問題で、監督官庁である金融庁は本店などへの立ち入り検査を実施する方針を決定しました。
断片的に報じられていた今回の不正融資はどのようなものであり、事業者向け融にはどのような影響があるのでしょうか。
今回は、商工中金の不正融資とその背景、事業者向け融資への影響を見てみましょう。

不正の温床となった「危機対応業務」とは

今回、一部に不正融資がおこなわれた形跡があると報じられたのは、2008年(平成20年)のリーマン・ショック後に創設された「危機対応業務」での融資です。
危機対応業務とは、内外の金融秩序の混乱や大規模な災害等に対応するため、担当大臣の危機認定にもとづき、「指定金融機関」が株式会社日本政策金融公庫からの信用供与を受け、融資や損害担保などをおこなう制度です。

これまでに認定された「事態認定」と予算措置の規模

被害規模に関わらず危機による影響を受けた事業者を対象としています。制度成立から現在までに認定された事態を見てみましょう。

  • 1.国際的な金融秩序の混乱(リーマン・ショック)
  • ・2008年(平成20年)12月6日危機認定~平成23年3月
  • ・事業規模:5兆6,000億円
  • ・貸出実績:4兆7,700億円
  • 2.東日本大震災
  • ・2011年(平成23年)3月12日危機認定~現在
  • ・事業規模:3兆5,000億円
  • ・貸出実績:2兆2,000億円
  • 3.円高等対策
  • ・2010年(平成22年)2月15日危機認定~2014年(平成26年)2月
  • ・事業規模:3兆3,000億円
  • ・貸出実績:2兆3,600億円
  • 4.原材料・エネルギーコスト高及びデフレ脱却等対策
  • ・2014年(平成26年)2月24日危機認定~現在
  • ・事業規模:4兆5,000億円
  • ・貸出実績:2兆8,600億円
  • 5.熊本地震
  • ・2016年(平成28年)4月15日危機認定~現在
  • ・事業規模:1,000億円
  • ・貸出実績:250億円

引用:「危機対応業務の要件確認における不正行為」に関する第三者委員会調査報告書
既に述べた通り、危機対応融資は影響を受けた事業者を対象としているため、融資全額が回収されて結果的に予算執行をともなわないケースも珍しくありませんでした。
今回明らかになった不正では、このような予算措置と予算執行のズレが狙われることとなったのです。

水増し・改ざんによる総額約200億円の不正融資

世界金融危機の発端となったリーマン・ショックへの対応として創設されたため、危機対応融資は制度面での不備が目立つものでした。この不備を突かれたのが今回明らかになった不正融資です。
不正融資そのものは審査に必要な書類の改ざんで業績を悪くみせかける極めて単純な手口でおこなわれましたが、第三者委員会の報告書では総数約22万件の融資のうち、816件で不正が認められ、不正の疑いとして141件が報告されています。

不正融資はなぜ大規模におこなわれるようになったのか

今回の第三者委員会の調査報告書で対象となった融資の件数は、全ての危機対応融資のうち1割にとどまり、金融庁では立ち入り検査などにより早い段階での全容解明を求めています。なぜ、このように大規模な不正融資がおこなわれたのでしょうか。
そもそも危機対応融資は、経営危機におちいった中小企業に対する一時的な制度融資であり、法改正と同時に商工中金が実施するものと定められました。
本来はごく小規模かつ短期の制度融資を想定していた危機対応融資ですが、制度開始に前後してリーマン・ショックや東日本大震災という想定もしていなかった危機が相次いで起きたことで危機対応融資の残高は商工中金の融資残高の4割近くを占めるまでに膨れあがりました。
これだけ融資規模が拡大したことで商工中金は危機対応融資のうまみに気づき、「円高対策」や「原材料・エネルギーコスト高及びデフレ脱却等対策」など、危機とは言いにくい名目での危機対応融資を実施するようになります。
このように相次ぐ危機対応業務を遺漏なく実施するため、予定されていた商工中金法改正にともなう民営化は先送りされ、最終的には2015年(平成27年)の法改正で民営化の節目である政府保有株式の具体的な処分期限を削除、危機対応業務の実施が商工中金の「責務」と法文に明記されることとなります。

危機対応融資の不正融資は事業者向け融資にどう影響するか?

国の制度を悪用した大規模な不正融資が明るみに出たことで、事業者向け融資の大手である商工中金はコンプライアンス(法令順守)などの改善を早期に求められています。
コンプライアンス強化が実施されれば、事業者向け融資の審査が現在よりも厳しくなることは想像に難くなく、その影響がどこまで広がるか、注目したいポイントです。

おわりに

今回の不正融資は制度面の不備を悪用される形でおこなわれましたが、その背景には金融緩和と財政出動による景気回復を目指す安倍政権の方針があるとのコメントも見られます。
その真偽はともかく、今回の不正融資の発覚と金融庁による立ち入り検査は、今後の事業者向け融資に悪影響をおよぼす可能性は小さくないため、その結果には要注目と言えるでしょう。

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